駆け出しの作曲家が初めて作曲依頼を受けたときの話

こちらは駆け出し作曲家・Howling-Indicatorのお仕事日記になります。これから作曲家を目指す人に少しでも参考になる内容になればと思い、キーボードを叩いています。

僕が初めて作曲の依頼をもらったのは、2021年の春ぐらい。著作権フリーでBGMを販売できるサイトAudiostockに曲をアップし始めてから半年ほど経った頃でしょうか。

依頼主は僕の友人。会社でアプリを作ることになり、「PR動画のBGMを作ってくれる?」とお願いされたときのお話をします。

最終的な楽曲イメージができていない状態での依頼

依頼は非常にありがたいのですが、事前情報は「熱意あふれる夢のある少年たちが、プロのサッカー選手になるためのコミュニケーションツール」というテーマと、ホームページ(作りかけ)とロゴの情報のみ。

まとめると、こうなりますよね。

事前情報

  1. アプリのテーマ
  2. 作りかけのホームページ
  3. 会社とアプリのロゴ

僕「どんな曲がいいのよ?」
友「なんか熱くなる曲」

こんな話をしていました。

第一線で活躍している作曲家の方だと、これだけの情報でも作りそうですが、駆け出し作曲家の僕には無理がありました。せいぜい「最新のエレクトロ系かな?」ぐらいしか思い浮かばず。

「これだけだとさすがに無理だわ」と話してみると、「今動画作ってるから、それからでもいいか」ということで、また後日に打ち合わせすることになりました。

リファレンス曲がなくてあっち行ったり・こっち行ったり

数日後に受け取った動画の尺はおよそ30秒ほどでした。YouTubeの広告として流すのだとか。

動画を見て「なんとなくオーケストレーションを使った、壮大な感じかな?」と思ったので、カンタンなデモを作って聴かせたのですが、「これはやりすぎ」とNGが出ました。

「熱くて壮大な感じ」をイメージしたので、主に使った音源はこんな感じだったと記憶しています。

・Damage
・Spitfire Audio
・Serum

コテコテの組み合わせかもしれません。

音楽に詳しくない依頼主もいる

「どんなのがいいのよ?」と聞けば「熱い感じ」と曖昧な表現をする友人。

作曲の依頼が初めてだったので、どう進めたらいいのかわからない僕。

「めんどくせえな!」と友人と参考になりそうなBGMをapple musicで探り、「こんな感じ?」と提案したのはFF13の閃光。彼は「かっけええ!!」と大喜びして「こんな感じで」と言ってましたが、「なんかお前、適当に言ってねーか?」と思い、他の曲も聴かせました。

ゼノブレイドクロスで楽曲担当をした澤野弘之さんの「CODENAMEZ」を聞かせると「かっけえ!!これで」となりましたし、なんとなくペンデュラムを聴かせてみると「これこれこれ!」となりました。

リファレンス曲を決めて最終イメージを共有できた

「じゃあこんな感じで決まりな!あとから変更なしだぞ!お互いの時間がもったいないぞ!」と、今思い出してみると、曲を作り始める前に最も大事な作業をしていたのです。

最終的なイメージを共有しないまま作曲を始めると、「違うなあ」なんてことが多くなりリテイクの繰り返し。お互いに時間だけでなく体力も消費しますし、正解がぼやけてわからなくなります。

最初の打ち合わせで最終的なイメージの共有をするのは本当に大事だと感じました。

作曲前の段階がとても重要

その後はペンデュラムっぽい作りかけの曲があったので聴かせてみると、「ああ、こんな感じでOK」ということで作り込み、動画と合わせて再生して見せると「OK!サンキュー!」で納品でした。

ちなみに彼はよくできた人物で「友人価格で」なんてことは一切言わず。「こういうのっていくらぐらいなの?」と聴かれたので、「売れっ子の作曲家は知らないけど、一般的に相場は〜」と説明すると「じゃあそれで」と数万円を支払ってくれました。

最終的なイメージが決まってからは早かったのですが、そこまでに時間がかかってしまいました。
初めの3時間はなんだったのだろうかと。

この時に学んだことをまとめてみます。

作曲前にやるべきこと

  • リファレンスを2〜3曲、最低でも1曲は用意してもらう
  • 音楽に詳しくない依頼主にはこちらから参考曲を提示する

こんなこともあるので、僕はご依頼をいただくときや、提案営業する際は、最初にイメージを共有するために参考曲を3曲程度提示していただいております。

よくわからない方には、僕がイメージ楽曲を探して「このような雰囲気でよろしいですか?」と提示しています。

手間に感じるかもしれませんが、トータルでかかる時間を考えると、間違いなくしておいた方がいい作業です。

作曲のご依頼の際は何卒、よろしくお願いいたします。