2年間の時間を無駄にした僕が「音楽専門学校には入学しないほうがいい理由」を説明
音楽専門学校とは主に、「プロのアーティストになるための勉強」を1~2年間する学校のこと。試験もないため、お金さえあればほぼ誰でも入学できます。
しかし、卒業してプロになれるのは一握りのみです。ほとんどの生徒は時間とお金を無駄にし、将来は就職活動で苦労するため、「進学しておけばよかった」と後悔します。
これは僕が2年間、東京の音楽専門学校に通った結果であり現実です。そのため進学に悩んでいる人には、「音楽専門学校には行かない方がいい」とはっきり言わせてもらいます。
なぜそう言い切れるのか。大きな理由は3つあります。
- プロになれるわけではない
- 生徒・講師のレベルに問題あり
- 音楽専門卒は学歴にならない
他にも理由はたくさんありますし、「そもそも何をする学校なのか」も見えていないのではないでしょうか?
そこで、2年間も音楽専門学校に通ってきた僕が、全てをお話しします。進路に悩んでいる方の参考になれば幸いです。
音楽専門学校に入学しない方がいい理由
「音楽専門学校に行く=プロになれる」ではありません。長くても2年間、基礎的なことをみっちり学ぶだけ。それだけでプロになれるのなら、誰もが音楽専門学校へ入学します。
基礎的なこと
- リズムに合わせた練習
- スケールの練習
- 譜面の読み方
基礎的なことは音楽教室でも学べますし、最近ではYouTubeで参考になる動画がたくさんヒットします。わざわざ専門学校に通う必要はありません。
ほかにも専門学校へ行かなくていい理由があるので、詳しく解説します。
プロになれるのはごく一部の生徒のみ
「うちの学校を卒業した生徒たちです」と、アーティストを紹介している音楽専門学校のパンフレットなどを見ると、「ここに通えばプロになれる」と思うかもしれません。
しかし、紹介されているのは無名のアーティストがほとんどです。
どこかの事務所に所属することが「プロ」というのなら、プロと言えるかもしれませんが、音楽だけで食えているとは思えません。
「音楽だけで食っていけているプロ」は、卒業生のごくごく一部のみだと考えておきましょう。
生徒・講師のレベルに問題あり
音楽専門学校は「プロになりたい」という気持ちと、学費を払う能力さえあれば、試験もなく誰でも入学できます。
これによって、生徒のレベルに大きな差がありました。ギター科に通っていた僕の実例を紹介します。
専門学校にいたギター科の生徒たち
- ドレミファソラシドがやっと弾けるレベル
- リズムに合わせて弾くとボロボロ
- スケールって何?な生徒がほとんど
- ライブをしたことがない
「どうしてプロになりたいと思ったんだろうか?」と疑問に感じるほどのレベルの生徒もいれば、アドリブもスケールもバシバシ決める生徒もいましたが、学校としては下のレベルの生徒に合わせてレッスンをします。
そのため初心者レベルのレッスンもあり、不満をおぼえる生徒も多数。一方では自分のレベルをしっかりと認識してへこみ、学校に来なくなった生徒も多数いました。
また、講師にも差がありました。
僕が通っていた音楽専門学校には、有名なアーティストもいれば、スタジオミュージシャンもいたり。テクニカルなギターを弾く講師もいれば、知識が武器の講師もいたりとバラバラでした。
中には「今思えば」ではありますが、ギターが下手くそな講師も混じっていたり。教え方が上手なら問題ないのですが、人気がなかったのか学校から去って行った講師もいます。
寄せ集めの生徒と寄せ集めの講師。有名な学校でしたが、実態としてはそんなものでした。
音楽専門卒は学歴にならない
僕が行っていた音楽専門学校は、入学してきた生徒のほとんどは高校を卒業した男子でした。僕も同じでため、音楽専門学校を卒業した後の最終学歴は「高卒」になります。
若いうちはまだよかったのですが、この学歴は歳をとるごとに邪魔者、足かせになりました。「高卒」という学歴は、就活や転職活動で、かなり下に見られるからです。
「音楽専門学校卒」と履歴書に書いても、「何の学校?」と聞かれるだけならともかく、「2年間、遊んでただけでしょ?」と聞かれることもあったほど。だからこそ僕は、音楽専門学校卒への入学に反対しているのです。
卒業してからバイトするなら就職する
音楽専門学校に通いながら活動をして、「音楽だけで食えるプロ」になれたらいいのですが、なれるのは1%もいないでしょう。
年齢によっては、卒業後に大学を目指すのもアリですが、夢を追い続けるのなら、フリーターをしながら音楽活動を続けるかもしれません。
しかし夢は叶わず、歳だけとって「就職するか」となっても、地獄を見ることになります。「ダメだったら働く」と考えているのなら、若いうちに就職して、サラリーマンをしながら音楽活動を両立させるのがベストです。
「音楽専門学校卒」が役に立つ職種
ほとんどの企業では、履歴書に「音楽専門学校卒」と書いても役に立ちませんが、学校で音響や照明、楽器のクラフトなどを学んできたのなら、就職先によっては書いておいた方がいいです。
専門学校卒が輝く職種
- ライブハウス
- 楽器職人
- 音響系のイベント会社
- 映像制作会社
音楽専門学校の学費はバカにならない
音楽専門学校の学費は高く、2年制で平均すると250万円ほどになります。
一方で国立大学は4年で250万程度、私立大なら450万ほどになりますが、一般の大学とは学ぶ分野が大きく違うので、音楽大学と比較してみましょう。
- 国公立音大 ─ 90万円(1年平均)
- 私立音大 ─ 200万円(1年平均)
- 音楽専門学校 ─ 125万(1年平均)
就職先の数は専門卒の方が少なくなることと、学ぶ量や質を考慮する限り、専門学校は非常に高いと感じます。
奨学金制度を利用してまで通ってはいけない
音楽専門学校には奨学金制度もありますが、以下の理由から「そこまでして通う価値はない」と言えます。
- 学ぶことが少ない割に学費は高い
- 卒業しても就職に有利にならない
お金がないなら国公立の一般的な大学へ進学し、「音楽好き」の仲間を見つけてプロを目指したほうがいいでしょう。
プロになるためのレッスンは基礎を学ぶこと
音楽専門学校は「プロになりたい」という夢を持った生徒を応援すること。そのため基礎をしっかりと教え込みます。
それだけ「プロになるためには基礎が大事」ということですが、どんなことを学ぶのか。僕が2年間を通して習ったことを紹介しましょう。
徹底的に叩き込まれるリズム感
音楽専門学校に入学してから1年間、みっちりとやっていたのはリズム練習です。
ドラム科、ベース科、ギター科の生徒で譜面を読んで、クリック(メトロノーム)に合わせる。難しい曲はなく、ブルース進行などの基本的なものばかりでした。
「クリックに合わせる」という練習をしたことがない生徒は、かなり苦戦。でもこれができないと、バンドで合わせることも、レコーディングもできないので、重要なレッスンだと言えます。
当たり前にできないとダメなスケール練習
ギター科では最も基本的なメジャー・マイナースケールと、メジャー・マイナーペンタトニックスケールを習います。
「メジャースケール」とは簡単に言えば、「ドレミファソラシド(Cメジャースケール)」のこと。マイナースケールは「ラシドレミファソラ(Aマイナースケール)」です。
ギターのどこを押さえると、なんの音が出るのか。曲によって、「使える音・使えない音」がわかるようになります。
唯一の座学だった音楽理論
音楽専門学校では音楽理論も学びます。なぜなら、譜面を読めないとアーティスト志望でも、スタジオミュージシャン志望でも、周りに迷惑をかけるからです。
習うことは、基礎中の基礎になります。
音楽理論の基礎中の基礎
- 譜面の読み方
- キーの理解
- 度数の理解
- コードの仕組み
ピアノを長年やっている生徒なら、すぐにわかるレベルの音楽理論でしたが、ほとんどの生徒は理解できておらず。ここにも生徒同士での大きな差を感じました。
学校や講師によって異なる授業内容
基礎的なレッスンや、必要な座学(音楽理論)は、どこの音楽専門学校でもやっていることです。その他の授業内容は、学校や講師によって変わってきます。
僕が通っていた学校では、基礎的なレッスンを除いて、講師を選択できました。
例えば、速弾きなど「テクニカルな技術」を身につけたいのなら、ハードロックを専門としている講師を選ぶ。作曲に興味があるなら、曲の分析が得意な講師を選ぶ、などになります。
実際に受けていた授業内容を紹介しましょう。
速弾きなどのテクニカルなレッスン
僕が専門学校に入学したのは、「ギター=速弾き」のイメージがとても強い時期だったので、「一度は受けておくか」とテクニカルなレッスンを受けました。
選んだ講師は、とんでもないテクニックを持っていて、正確なリズムでスウィープからフルピッキングをする、ギターキッズなら誰もが憧れるタイプのギタリストです。
ただ、性格的に問題があり、かなり暴力的な面もあったため、僕はすぐにレッスンをやめて、他の講師に変えました。なお、彼は問題が多数だったのでクビになっています。
作曲の役に立つ曲の分析
誰もが知っているバンドのギター講師のレッスンは、かなり人気がありました。見た目と違ってかなり優しい教え方で、授業内容もわかりやすい。主な内容は、曲の分析です。
「分析」と聞くと理論的な話になりそうですが、そこまで細かいものではありません。構成とコード進行、メロディーを分析する感じです。
曲の分析
- Aメロ・Bメロ~と分けるなどの構成の分析
- コード進行の分析(耳コピするわけではなく譜面が用意されている)
- メロディーをギターで弾いてアレンジ
多くの曲を作りたいのなら、「多くの曲を聴いて分析する必要がある」と理解させてくれたレッスンでした。
アドリブからの編曲レッスン
売れている曲をもとにして、アドリブギターを弾き、編曲するレッスンがありました。担当の講師はギターテクニックはなかったものの、音楽知識は豊富。レッスンは楽しかったです。
しかし、アレンジしてギターで弾いても、明らかな間違いでもない限り指摘はなく、「いいんじゃない」というていどの感想だけ。
「意味がない」と思い、他の講師のレッスンを受けることにしました。
生徒たちでバンドを組まされる
僕の通っていた音楽専門学校では2年生になると、スタジオミュージシャンになりたいのか、アーティストになりたいのかで、授業内容が異なりました。
スタジオミュージシャン志望なら、今までの授業の延長になり、アーティスト志望なら講師が選んだ生徒たちで、バンドを組まされました。
何をするのかというと、オリジナル曲を作り、講師たちの前でライブで発表するだけ。講師からのアドバイスも特になく、なんの意味があったのか謎です。
手抜き感たっぷりなレッスンで、さらには講師の選択でバンドを組まされたためメンバー間で喧嘩も多発。さらに生徒は減っていきました。
音楽専門学校に頼らないプロへの道
2年間、音楽専門学校に通って習ってきたことを紹介してきました。ためになる授業もありましたが、「大金を払って2年間通う価値があったか」と問われれば、「なかった」と言い切れます。
ただし、これは僕に音楽的な素養があったことも関係するので、経歴を紹介しておきましょう。
音楽経歴
- 4歳から12歳までピアノレッスン
- 12歳からギターを独学で練習
- 高校2年間ギター教室へ
おかげで譜面は読めましたし、基礎的な音楽理論も身につきました。リズムは好きな曲に合わせてギターを弾いていたことで、自然と身についています。
つまり僕と同じか、それ以上に音楽のレッスンを受けてきた人は、音楽専門学校へ通う必要は全くないと言えるでしょう。
考え方によっては「専門学校に行かなくてもプロになれる道がある」と言えるでしょう。そのための方法を解説します。
基礎を勉強する
ギターやベースなどの楽器の演奏方法や歌い方、作曲などに必要な「音楽の基礎」は、独学が得意な人ならYouTubeや専門書でも学べます。
オススメのYouTubeチャンネル
イマイチわからないのなら、専門学校ではなくて音楽教室でも十分。どの教室の先生でも、間違いなく基礎ぐらいは知っているからです。
月謝は高くても10000円(週1回のレッスンと仮定)ぐらいでしょうから、しっかりと教えてもらって自宅でも勉強・練習するだけで、十分に基礎は身につくでしょう。
「プロになりたい」という気持ちが本物なら、できるはずです。
リズムの練習
楽器を演奏する仕事がしたいのなら、リズム練習は必須です。メトロノームに合わせて、基本的な練習をしましょう。
リズムがあっているかどうかは、客観的な判断が必要です。スマホで録音(録画)して確認するクセをつけてください。
譜面を読めるようにする
譜面が読めないアーティストやプレイヤーは、プロの現場では役に立ちません。ギタリストやベーシスト、ボーカリストなら譜面ぐらいは読めるようになりましょう。
弦楽器を弾いている人はTAB譜を使っているとは思いますが、五線譜に書かれている音符を見て弾けるようにしてください。
プロとして食っていくために必要なこと
ここでの「プロ」とは、音楽だけで生計を立てていける人のことを指しますが、プロになるためには上にあげた3つのことが当たり前に必要です。
そのほかに必要なものは、何があるでしょうか。思いつく限りのことをあげてみます。
- いい曲を作るセンス
- 仕事に恵まれる運
- 絶対に諦めない精神力と根性
- ずっと音楽を勉強し続ける
- 自分を売り込む営業力
あげればキリがないほどに、教わることもできないことが多数あります。だからこそ、音楽専門学校では基礎を教えることをメインにしているのです。
つまり、「プロとして食っていくために必要なこと」は基礎をしっかりと身につけてセンスを磨き、音楽の勉強をし続けて自分を売り込み、「諦めない」ということ。
本物の「音楽好き」じゃなければ、かなりキツイ道のりですし、うまくいく可能性も低い。この現実を知った上で、本当にプロになりたいのかを考えて欲しいです。
現代の音楽専門学校で学べること
事実と実例をもとにした上で、「音楽専門学校には行かないほうがいい」と言っていますが、僕が通っていたのは20年ほど前のお話。
当時と今では状況は違うでしょうし、学校によっては「受けたほうがいい授業」があるかもしれません。
調べてみたので、一つずつ見ていきましょう。
音楽プロデューサー科
プロデューサーというものは本来、「お金を管理する人」のことですが、音楽業界のプロデューサーは作曲もしたり、売れるまでの道筋を作ったりと役割は多岐にわたります。
なんとなくキラキラしてイメージをもちますが、結局のところプロデューサー科というのは、「作曲家を育成するコース」です。
学校では基礎を学んで多くの曲をコピーし、新しい曲を生み出すことになるため、音楽教室に通うだけで十分だと言えるでしょう。
コンサート・イベント科
コンサートやイベントを計画・運営するための学科。PAや照明、イベント・企画に携わりたいのならアリなのかもしれないので、学費と応相談です。
ただし僕なら、イベント系の会社でアルバイトをしてお金をもらい、経験も積みつつ、関係者と交流していったほうが、理想の仕事につけるのではないか?と企みます。
レコーディング・MA
レコーディングエンジニアには専門の知識が必要になります。
個人でも学校に行くことなくレコーディングはできますが、マイクの距離や配線、PA卓の取り扱い、今ならDAWソフトの利用も必須になっています。
いわゆる「職人」と呼ばれるレベルの人から教わる価値は十分にありますが、音楽専門学校で勉強して卒業しても就職先はかなり限られるだけでなく、数も少ないという覚悟をしておく必要はありそうです。
DAWソフトの利用は参考書・ネットで
DAWソフトの利用方法に関しては、参考書でも十分に学べますし、プラグインやソフト音源の使い方まで丁寧に教えてくれるYoutubeチャンネルもあります。
オススメのYouTubeチャンネル
本来なら有料でもいいぐらいの内容ばかりなのに、全て無料で視聴できます。
どうしても習いたいのなら作曲系の教室を利用したり、週に数回のペースで専門学校を利用するだけでも十分でしょう。
ピアノ調律師
ピアノの調律師はかなり専門的な知識を必要とします。日本国内に数は少ないようなので、ピアノの需要次第では専門学校で学ぶのも全然ありです。
楽器職人
軽く調べてみた限りですが、「調律師」「楽器職人」などの専門職に関しては、専門学校に通ってもいいとは思います。
この他に関しては、通う必要はありません。習うのなら音楽教室で十分です。
音楽専門学校に通っても問題ない人
「音楽専門学校には行かない方がいい」ということを、わかってもらえたと思いますが、それでも「行ってみたい」という人へ。
「通っても問題のない人」もいます。
通っても問題のない人
- 働く必要がない資産家の子
- 学業と両立できる人
- 仕事と両立できる人
僕が心配しているのは、中学や高校を卒業してから音楽専門学校に通う人たち。なぜなら、卒業後はうまく行かず、就職もできずに路頭に迷う可能性があるからです。
つまり、働く必要がない人や、大学に行って学業と両立できたり、社会人をしながら通える人なら、音楽専門学校に入学しても問題ないと言えます。
金銭的にも体力的にもタフなら無理ではありませんし、プロになれなかったとしても保険があるので安心です。
まとめ
「プロのミュージシャンになりたい」という気持ちは応援しますが、そのために音楽専門学校へいくことはお勧めできません。なぜなら、ほとんどの人は音楽専門学校に行く必要がないからです。
音楽専門学校に行けばプロになれるわけでもありませんし、学べることが少ない割には学費も高く、就職に有利になる要素もない。最近では音楽とはほぼ関係ない学科もあり、迷走している学校もあるようです。
一度だけ、有名な音楽専門学校の「運営員募集」ということで面接を受けたことがありますが、生徒の夢を応援するどころか、「お金だけが目的じゃねーか」と怒りを感じたこともあります。
もちろん、生徒がプロになれるように一所懸命に尽くしてくれる学校や講師もいますが、学べることは基礎を固めることがメイン。それなら、音楽教室に通うだけでも十分です。しっかりと考えてください。
音楽専門学校に入学したいと思っている人や、そんなお子さんを持っている両親の方の参考になれば幸いです。