赤字になるならライブをするな!黒字になるライブをするためにできることをすべて公開

プロのアーティストに憧れてバンドを組む若者はたくさんいます。僕は高校生の頃のビジュアル系全盛期に初めてバンドを組みました。当時はコピーしかしておらず、スタジオを借りて楽しく演奏していただけなのですが、しばらくすると誰もが思うこと。それは「ライブをやってみたい」です。

憧れのアーティストのライブを見たことがあると、こんな妄想をするのではないでしょうか?観客がたくさんいて、コールをするとレスポンスをしてくれて、サビになると全員で大合唱。ラストの曲の演奏を終えてステージを後にすると、溢れんばかりのアンコールを望む声が。

自分たちのライブもそうなるといいのですが、現実はそんなに甘くはありません。まず、お客が集まりません。プロでもなんでもないアマチュアミュージシャンのライブに訪れてくれる人なんていないのです。最初は友達や家族でも連れて来れば2~30人ぐらいは集まりますが、その後が続きません。

初めてのライブなら、ほとんどはブッキングになります。ライブハウス側が似たようなジャンルのバンドやアーティストを集めて、アーティストは1組ごとに持ち時間は30分程度。そんな短い時間のためだけに1000円ぐらいのチケットを買い、わざわざライブハウスまで見に来る友達はほとんどいないはずです。どれだけ仲の良い友達だとしても、ファンでもなければ「行きたくない」というのが本音なのです。

しばらくは「お客(友人)はいるから大丈夫」と勘違いして営業活動を行わず、ガラガラになる観客席。見た目が非常に悪いため、「ゲストでいいから」と友達を呼んで「客がいる」ように見せることもできますが、ゲストでもそのうち来なくなります。なぜなら彼らはファンではないですし、ライブハウスに足を運ぶのも億劫だからです。

そして嵩むライブハウスの出演費用。気がついたらライブのためにアルバイトをしている始末。ろくに営業活動をしていないため、お客は一向に増えない。このような若いアーティストは掃いて捨てるほどいます。

ライブをする場所にもよりますが、アーティスト1組で3~4万円前後の費用が必要になるとすると、4人メンバーがいたとして1人1万円の負担。チケットが1枚1000円なら1人当たり10人のお客を連れてくるとペイできますが、これが難しいのです。1人のファンを作るのも難しいですし、ファンでも予定があれば来てくれるとは限らないからです。

ライブをするたびに赤字になる。これが、ほとんどのアマチュアアーティストの現状です。そんな方達に声を大にして言いたい。「赤字になるならライブをするな」と。

「赤字になるライブをすること」と「ライブを黒字化にする手段」を紹介させてください。

赤字になるライブに全く価値はない

プロを目指すわけではなく、趣味の範囲で仲間を集めてライブをする分には赤字になっても問題ありません。「大人の趣味」として楽しめますし、みんなで好きな曲を演奏して、お酒を飲みながらワイワイするのも楽しいです。社会人ならいいストレス発散にもなりますし、客の集め方によってはいい社交場にもなります。

しかし、プロを目指しているのなら「赤字になるライブ」をやってはいけない。

「いいライブ」をしていてもスカウトはされない

レコード会社のスタッフがスカウト目的でライブハウスに出入りしていた時代なら、「赤字になるライブ」でもやる意味はあったのかもしれませんが、今はどうでしょうか。そのような話は一切聞きません。

有名なアーティストを数多く輩出していたライブハウスならわかりますが、このタイプのライブハウスは出演条件が厳しく、動員数や知名度も考慮されます。「一度でいいから出演してみたい」と思ったことのあるライブハウスがそうですね。

ただし、有名ライブハウスに出演できるレベルのアーティストなら動員はそこそこあり、赤字になるようなライブはしていないはずです。

動員があって初めて注目される

レコード会社などに知り合いがいるライブハウスの店長やスタッフもいます。「最近、いいアーティストいない?」と聞かれることがあり、客付きのいいアーティストなら紹介することもありますが、毎回お客がついていないアーティストを紹介することは滅多にありません。

つまり、赤字になるライブはお金を失うだけで、なんの得にもならないのです。

売れない対バンのイベントに参加しても意味はない

ブッキングでライブをしていると対バン(自分たち以外のアーティスト)と交流ができ、仲良くなることもあります。中にはそこそこ客がついている対バンもいて、イベントに呼ばれて演奏するとファンが増える可能性はあります。

ただし、ブッキングでライブをしているアーティストのほとんどは動員がありません。それは彼らが企画するイベントにも反映されます。

ブッキングと比べてみると、他のバンド目当てのお客を取り込める可能性があるイベントですが、期待しているほどの見込みはありません。イベントを通しで見てくれるお客は少ないからです。お目当てのバンドの演奏が終われば帰るのが普通で、ブッキングライブとあまり変わりはないのです。

売れているアーティストのイベントには参加するべき

売れっ子アーティストが主催するイベントへの参加や、前座を頼まれたのなら受けるべきです。ファンがたくさんいるアーティストが紹介するアーティストなら、ファンも注目してくれます。一方で、お客がつかないアーティストの企画に参加してもほとんど意味はないどころか、労力とお金の無駄に終わります。

お客がついているアーティストは、ライブハウス側から出演依頼をされていたり、格安・無料で出演しています。お客が入る見込みがあるため、ホールをレンタルしてイベントを企画することもあります。

売れっ子に誘われる可能性は低い

売れているアーティストのイベントに参加できたらファンが増える可能性の高いのですが、彼らが声をかけるのは「そこそこ客がついているアーティスト」のみ。毎回の客付きが0~3人ぐらいのアーティストに声をかけることは滅多にありません。

試しに、twitterなどでフォロワー数の多いアマチュアアーティストをイベントに誘ったり、イベントを企画しているようなら応募してみてください。アーティスト歴や音源の確認だけではなく、ライブの動員数も聞かれます。全てを伝えると「動員がないようなので、申し訳ないのですが」と丁寧に断られますし、イベントに誘っても「私が参加するメリットは何がありますか?出演費用はいただけますか?」と返されて終わりです。

これを冷たいと感じますか?逆の立場になると分かるように、相手はビジネスとして音楽活動をしているので「当たり前の返事」だと言えます。

対バンと仲良くするのは問題なし

お断りしておきますが、対バンと仲良くなることや、交流するのも一向に構いません。飲みに行ったり情報交換したり、お互いの音楽性を評価しあってアーティストとしてのクオリティーを高めることもできますし、時にはメンバーが脱退してヘルプをお願いすることもあれば、新しいメンバーを紹介してくれることもあります。同じ夢を持っているもの同士の交流は楽しくもあり、一緒に頑張れる仲間は非常に心強いものもあります。

仲良くなることにデメリットはないですし、メリットの方が多いのですが、対バンと仲良くなるためだけにライブをするのはお勧めできません。交流がしたいのならSNSでも十分です。

黒字になるライブをするためにできることを考える

赤字になるライブをするのはダメですが、「音楽を売る」というビジネスモデルが崩れ、プロのアーティストですらCDや音源が売れなくなっている現在。音楽業界はライブがメインの収入源になっているのは現実なので、どうやって黒字になるライブをしていくかを考えなければいけません。

「自分たちの曲がダメなのだろうか?」「ライブパフォーマンスがダメなのだろうか?」と悩むかもしれませんが、おそらく原因はそこではありません。そもそも、あなたのことを誰も知らないし、曲だって聞いたことがない人が全人口の99%以上いるのが原因です。

そんなアーティストのライブを見に行きたいと思いますか?まずは、あなた(もしくはバンド)のことを宣伝する必要があります。そのためにできることを考えていきましょう。

無料で宣伝できるツールを最大限利用する

プロなら事務所の方で宣伝してくれますが、アマチュアはどうしていくか。ライブを続けていけば動員が増えるわけではないですし、ライブの告知をすると客が増えるような甘い話もありません。広告費を支払えば宣伝してくれる業者がいたとしても、予算はありません。

そこで心強いのが無料で利用できる宣伝ツールです。ブログやSNS、Youtubeで自分を宣伝、曲を宣伝することから始めましょう。

Youtubeで宣伝してファンを増やす

現在、宣伝する場所として最も効果的なのはYoutubeでしょう。内容次第ではハネますし、広告収入もつくオマケ付き。満足のいく効果を上げるまでに時間はかかりますが、当面は「ファンを100人作る」という目標でやってみましょう。

動画内容は、自分たちの楽曲を利用すること以外は自由。イケメンバンドなら顔を映しておけば女性の固定ファンはつくでしょうし、見た目のいい女性アーティストなら男性の固定ファンもつくでしょう。

弾き語りでもいいからたまに歌って実力を見せるのもアリですし、スタジオなどでリハを見せるのアリ。ライブっぽいパフォーマンスもできると生で見たくなる人も増えてくるので、生配信でリクエストに答えて演奏するのも効果的です。

無名でもライブハウスで見てくれる人数よりは多い

「無名のアーティストのYoutubeなんて見てくれるだろうか?」と疑問に思うかもしれませんが、無名のアーティストのライブにお金を払ってまで見に来る人よりは確実に多く、人の目に触れる機会もYoutubeの方が確実に多いです。

視聴数は少ないかもしれませんが無料でできることですし、増えるように工夫・企画していきファンが集まってくると、「ライブを見てみたい」「ライブやって!」なんて声も集まってきます。ここで初めて、ライブをするかどうかを考える段階になるのです。

無料のホームページスペースを利用する

今時のアーティストならホームページぐらいは持っています。理想はレンタルサーバーを借りて運営することですが、ここにお金をかける必要はありません。余裕ができてからでも十分です。

最初は無料のサーバーを利用して簡単なホームページを作り、アーティストの紹介ページや音源の紹介、どんなアーティストなのかをホームページで宣伝してください。

音源はSoundcouldにアップロードしてホームページに貼り付けるのが便利です。

ホームページの代わりにブログを利用

ホームページを作るのに、ある程度の知識は必要です。難しくはないのですが、宣伝するための勉強に使う時間があれば、曲作りや音源制作に時間を割いた方がいいです。

WEB系の知識がなければブログでも大丈夫です。有名どころのアメブロなどを利用して、ホームページがわりに利用してみましょう。

SNSを利用して宣伝する

Youtubeやホームページ、ブログを開設しても見てくれる人がいなければどうにもなりません。動画やブログなどを投稿したら、SNSで宣伝していきましょう。

宣伝だけでは興味を持ってくれる人は少ないのですが、「PPAP」のように何がきっかけでブレイクするかわからないのが現代です。宣伝だけに時間を割いてしまい、バンド活動が疎かになるのは本末転倒ですが、SNSを活用してください。

華のあるアーティストならインスタでの活動が効果的かもしれません。積極的に顔を出していきましょう。

見込み客を計算して黒字になるならライブをする

宣伝効果の結果、「ライブを見たい!」というファンが増えてきたらライブを計画してみましょう。ブッキングライブなんて言わずに、ホールをレンタルしてのワンマンライブもアリです。

ファンが100人いれば、30人はきてくれるでしょうか。「◯月◯日にライブをするとしたら来てくれる人いる?」と聞いてみるのが一番いいですね。人数をある程度把握できたら、ちょうどいいキャパのライブハウスを探し、「見込み客数×チケット代」がレンタル料を上まればライブを決行しましょう。欲を言えば、バンドなら「人数×8000円」ぐらいの黒字にはしたいものですが、まずは黒字になれば万々歳。浮いたお金で飲むお酒は最高なのでオススメしておきます。

最初は狭いライブハウスで十分。軌道に乗ってファンが増えてきたらキャパを広くし、より良いライブをしていきましょう。

「質の良いライブをしている」という自負があれば、Youtubeなどで生配信するのもアリです。「投げ銭」のシステムも利用することで、収益も増えていくはずです。コロナの影響で配信設備を整えているライブハウスもあります。ピッタリな場所を探してみましょう。

無料のライブスペースも利用できる

無料で利用できるライブハウスや、レストランバーなどもあります。PAや照明は頼りないですが、お客を集めることができればお店からは重宝されますし、チケットを売れば丸々儲けになります。

弾き語り系のアーティストならライブハウスにこだわる必要もないので、自分にあった場所を探してください。

プロになりたいなら黒字になるライブをするべき

黒字になるライブをするためには、お客を集める必要があります。Youtubeでもいいし、SNSを駆使するのもいいです。あなたのことは誰も知らないし、曲も聞いたことはありません。可能な限りたくさんの人の目・耳に触れてもらえるようにネット上で活動して、存在を知ってもらうことが重要です。ファンが増えると、ライブを希望するファンも増えてきます。

「ライブをしていればファンが増える」なんて考え方は化石です。「ファンを作るためにライブをする」のではなく、「ライブをするためにファンを作る」を徹底してください。「ライブをして欲しい」「ライブが見たいです」というファンが増えて、ライブハウスのレンタル料金がペイできる見込みがあればライブをする。できれば儲けができるようにライブをするのがビジネスです。

プロになるために上京し、お金がないからアルバイトをして、その中からリハーサル代金やライブ料金を支払っているアマチュアアーティストはたくさんいます。「ライブのためにバイト」というのは本末転倒です。

赤字になるならライブなんてしなくてもいいのです。メリットなど何もないと言ってもおかしくないのですから。