アマチュアアーティストへ!「音楽で食べるために東京へ」の時代は終わり。地元で活動しよう
日本の文化発信地・東京。地方在住なら憧れている人も多いようで、「東京行って、一発当ててくる!」と芸人を目指したり、「プロのアーティストになりたい」とギター片手に上京する若者も。バンドメンバーみんなで引っ越して、都内各地のライブハウスを巡っていく活動も昔はありました。
一体、東京に来て音楽活動をする理由は何でしょうか。音楽事務所やレーベルがたくさんあるからでしょうか。プロがたくさんいて、誰かの目に入ってデビューできるかもしれないと考えるからでしょうか。最新の音楽を最速で知れるからからでしょうか。
昔はそうだったのかもしれませんが、今は違います。スカウトされたから上京するならともかく、それ以外なら東京に行く必要はありません。「音楽で食べていくために東京へ」の時代はすでに終わっているのです。
プロになりたいのなら地元に根を下ろして活動してほしいと願いますが、理由を説明しましょう。
プロのアーティストが音楽活動をしていくのに最も適した場所は東京
東京には何でもあります。誰でも知っている企業やテレビ局、5つ星のレストランやホテルもありますし、おしゃれなカフェから有名・流行のものなら間違いなくあります。
これは音楽についても同じでした。主要音楽レーベルや事務所は東京に固まっていますし、プロを目指すアーティスト憧れの場所・日本武道館も東京にあります。東京が「音楽活動をするなら最も適した場所」なのは間違いありませんが、これはあくまでもプロになってからの話です。
アマチュアアーティストが東京での活動にこだわる理由はない
アマチュアの時点で東京にこだわるのは違うのではないでしょうか。ライブハウスはたくさんあるので、ライブをする場所には困りませんが、黒字のライブができない間は意味のない場所だと言えます。出演費用を支払うために、音楽活動よりもバイトなどの労働に時間を割いて、フェードアウトしていくアーティストもたくさん見てきました。
ライブは黒字にならないと意味はないですし、赤字になるライブを続けていてもプロにはなれません。つまり、アマチュアにとって「ライブハウスの数」は関係ないのです。
昨今のコロナによってライブ活動は難しくなってきているので、今後のやり方をしっかりと考えていく必要があります。ストリーミングによる配信がスタンダードになる可能性は大いにあります。今のうちに環境を整えておきましょう。
音楽事務所・音楽レーベルの数は関係ない
東京には音楽事務所やレーベルもたくさんありますが、アマチュアが足を運ぶことはほぼないと言っていいです。
アマチュアがすることは、せいぜいデモ音源を送ることだけですが、郵送ではなくMP3などのファイルをメールで受け付けている会社もありますし、音源をホームページなどで公開しているのならURLを伝えるだけでOKの会社もあります。売り込み活動は随分と楽になりましたね。
今時デモテープを直接渡しに行くアーティストもいないでしょう。やる気は感じるので熱意を受け取ってくれるかもしれませんが、所属させてくれるかどうかは別の話。場合によっては迷惑がられることもあるので気をつけましょう。
プロや業界人とコネができてもビジネスが成立しなければ意味はない
東京で音楽活動をしていると、色々なアーティストと遭遇します。対バンなどの繋がりでプロと出会うのも珍しくはありません。
仲良くしておけば前座やイベントへに誘われたり、東京で活動する意味はあるのかもしれませんが、滅多に遭遇しないだけでなく、誘ってくれる可能性は恐ろしく低いです。プロやアマチュアの域を超えているアーティストは、イベントに誘うアーティスト・バンドはしっかりと選びます。
少なくともライブハウスのノルマぐらいは楽に達成できる動員があり、一緒にライブをするメリットがなければ誘いません。どれだけ仲良くなったとしても、ビジネスとして成立しなければ誘ってくれないので期待しないほうがいいです。
願望に期待して上京するのはダメ
そもそも、プロのアーティストと仲良くなったとしても、「音楽事務所側の意思」が優先されます。大御所なら「あの子達を出演させたい」という鶴の一声でお呼びがかかるかもしれませんが、そのレベルのアーティストに遭遇できる可能性は恐ろしく低いです。
遭遇できたとしても、コミュニケーション能力が桁違いに高く、懐に入り込むのが得意で強引な営業もできる人ならうまくいく「かも」しれませんが、そんな薄い可能性のために東京へ行くのはお勧めできません。
東京なら生活をするのに精一杯の状況になりがち
ネットに繋がっていればなんでもできる現代では、東京で音楽活動をするメリットはほとんどないと言ってもいいぐらいで、むしろデメリットが目立ちます。
まずは家賃です。4畳半1Kのアパートで、どれぐらいの家賃かご存じでしょうか?地域にもよりますが、5万円はかかると考えておいたほうがいいです。言っておきますけど、これは風呂・トイレ別ではありませんし、場合によっては風呂なしだったり、洗濯機を置く場所がなくて共用のアパートだってあります。僕が初めて住んだアパートは、そういうところでした。
どうぞ、東京の賃貸をスーモで調べてみてください。家賃を稼ぐために時間を奪われて、音楽活動はろくにできなくなる人がほとんどですから。
東京のアパートで楽器演奏はできません
5万円の安アパートなら壁も薄く、エレキギターをアンプに繋げて弾くのは不可能です。速攻で苦情が来ますし、下手をすると追い出されてしまいます。ヘッドホンをつければ大丈夫そうに感じますが、生音ですら隣に聞こえるようなアパートだってあります。アコギは間違いなく弾けず、歌なんて当然のことながら歌えません。
自宅で練習できないのなら、スタジオを借りるか防音設備の整っている場所、例えばカラオケなどに行く必要があり、お金はかかってしまいます。
アーティスト用の物件なら10万円以上
練習ができる部屋を借りようとすると、家賃は7~9万円ぐらいは覚悟しなければなりません。もちろん、このレベルでも歌ったり、アコギをかき鳴らすのは厳しいです。「苦情は来ないかもしれない」というレベルになるだけ、ということは言わせてもらいます。
なお、アーティストを目指す若者のためのマンションはありますが、最低でも家賃は10万円かかると考えておきましょう。
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どうしても上京するならバンドメンバーで生活する
バンドメンバー全員で上京するなら手段はあります。1人5万円まで家賃を出せるのなら、20万円のファミリー向けマンションを借りてみましょう。これぐらいなら歌っても苦情はこないでしょうし、アコギぐらいなら弾けるでしょう。エレキギターも大音量でなければ弾いても大丈夫そうです。
他にもメリットはたくさんあります。
- いつでもミーティング・作曲・編曲が自宅でできる
- ネットを利用した営業・宣伝の協力がすぐにできる
- 自炊で食費・光熱費・通信費などの経費は削減できる
徹底的に詰めていけばレコーディング費用も捻出できるかもしれません。
上京する前からファンが十分にいる「セミプロ」のバンドなら、東京で活動してもよさそうです。すぐにデビューできるとは限りませんが、すでに動員が十分ならライブハウス側も協力してくれるでしょうし、業界人やプロなど誰かの目に入るからです。
上京しても東京に住む必要はない
上京しても東京に住む必要はありません。東京で活動できればいいのですから、住むのは埼玉でも千葉でもいいのです。東京からちょっと離れるだけで随分と家賃は安くなります。
都心までの距離はさほどありませんし、電車も腐るほどありますし、家賃を抑えていけば車を所有することもできます。「東京で活動する=東京に住む」ではないので、お気をつけください。
生活費を稼ぐのがメインになるなら上京しない
セミプロにも満たない状態なら、上京するのはお勧めできません。売れる見込みが十分にあればいいのですが、家賃のため、スタジオ代のために働くようになってしまい、音楽活動がおろそかになってしまうアマチュアアーティストになってしまいます。親が金持ちで支援してくれるのなら話は別ですが、そうでないなら仕事がメインになって、本末転倒になりがちです。
さらに、東京には誘惑がたくさんあります。遊べる場所は腐るほどありますし、24時間営業しているお店もあります。ギャンブルが好きな人、特にパチンコやパチスロが好きな人も要注意です。地方よりも店が多いだけではなく、設定のベースが高め。大抵はどこかのお店でイベントをやっているため、パチンコ屋に通うのがメインになってしまった人もたくさん見て来ました。僕の周りのバンドマンにこの手のタイプは多く、あれから20年ほど経ちましたが彼らがどこで何をしているのかは知りません。
東京にいなくても日本全国どこでも発信できる時代
東京でデビューすることができれば様々なメディアが発信してくれるため、日本だけではなく、海外から注目される可能性もあります。これが東京の魅力だったのですが、今はどうでしょうか。ネットに繋がっていれば日本全国、どこからでも自分たちを発信できる時代になっているので、東京にこだわる必要は全くないのです。
当然のことながら、東京に固まっている音楽関係者や企業はノウハウを知っているので、一般人よりも効果的に宣伝してくれるのは間違いないのですが、アマチュアには関係ないこと。プロになって所属しないといけないので、まずは自分たちで発信していく必要があります。
ネットを大いに活用して地元から発信
アマチュアなら資金もなく広告費は支払えないので、可能な限り無料で利用できるものを活用しましょう。それはYoutubeやTwitter、SNSなどのネット媒体です。これなら日本全国どこからでも発信できます。いや、世界のどこにいても発信できるのです。
まずはネットで配信して、身近なところから宣伝していきましょう。
足も使って地元で営業していく
安い値段でチラシが作れるのなら、興味を持ちそうな人が集まる場所に貼ってもらうとか、音楽好きが集まるバーに置いてもらうのもいいですし、簡単なPVを作ってYoutubeで配信していきましょう。
東京都は違い、地方の方が人間の距離も近くなるので名前は広がりやすいです。普通の飲食店でも協力的な人は多いので、食事に行くついでに営業もしていきましょう。「いい音楽」を作っていても、知られていなければ意味がありません。アマチュアアーティストに足りないのは営業力です。積極的に動いていきましょう。
路上ライブで周知活動
許可があれば、路上や公園などでのライブも可能です。仕事帰りのサラリーマンが行き交うビジネス街の駅前や、休日の大きな公園などでお客が集まるまで活動してみましょう。大きな音を出すのはNGの場所もあるので、アコースティックバージョンにアレンジすることをお勧めします。
上京を考える前にできることはいくらでもあります。まずは地元にどっしりと根を下ろして、名前が売れるぐらいになりましょう。
「音楽活動=東京で」ではなく「音楽はボーダーレス」を実現しよう
「音楽で売れたいなら東京へ」という考え方は、いまだにアマチュアアーティストの頭に根付いています。地元では有名で、すでにプロ・セミプロと言えるようなレベルのアーティストなら東京で活動しても良さそうですが、アマチュアの域を出ない状態なら意味がないだけでなく、生活費がかかるなどデメリットが目立つので、考え直した方がいいです。
まずは地元発信にこだわり、ネットを利用して全国~世界へ発信してみましょう。うまく行けば、東京に行く必要もなくなるかもしれません。
セルフプロデュースもできる時代
音楽事務所に所属したい気持ちはわかりますが、東京に行けば有利になるわけでもありませんし、地方に支社を持っている会社もあります。所属したいのなら、まずは地方からがんばってみましょう。
また、所属するメリットも考えて欲しいです。一時期と比べると資金潤沢の業界ではないため、宣伝に利用できる経費もあまりなく、レコーディング費用なども自費になる可能性だってあります。
CDの販売にこだわらず、配信オンリーにしてしまえば流通も何も関係ありませんし、現代はセルフプロデュースしやすくなっています。音楽事務所に所属する必要性はどれほどあるのか、調べた上で考えてください。
「憧れの東京」を捨てましょう
僕は高校を卒業してからプロを目指して上京して音楽専門学校に通いましたが、ほとんどは意味のない授業ばかりで、同級生は一人一人と減っていき、1年後に残っていた生徒は半分以下。卒業してもメリットはほぼゼロでした。
僕はフリーターのような生活になり、運よく20代半ばで音楽系の仕事に就けたものの、東京に来た意味があったのかどうかというと「ほとんどなかった」と言えます。「現実を知れた」という大きな意味はありましたが。
現在はネットの発展によって、音楽活動の幅はかなり広くなっています。地方在住でもできることはいくらでもあるので、東京にこだわる理由はほとんどないと言えます。
地元からの発信にこだわってみよう
アマチュアアーティストはまず地元での活動に精を出し、ネットを活用してください。最近では、地方でフェスを開いて盛り上げようとしているプロもいます。地元で音楽活動をしつつ、しかも地元に貢献できたら。これほど素敵なことってないじゃないですか。
「音楽といったら東京」という考え方はもう古いのかもしれません。どこからでも発信できる音楽、地方を活性化することもできる音楽をもっと考えて、他の産業や業界を融合することができれば、音楽の新しい利用形態が生まれるかもしれません。
アーティストにとって、いい反応が起こるのではないかと期待する次第です。